ウェブ時代を行く | hillbridge

ウェブ時代を行く

たしか去年の12月ごろに書いていて、著者の梅田さんが全部読みにいくぞっていうから、めずらしく推敲しようと思って寝かしていた文章だけど、特に良くなるわけでもないので、アップしてしまいます。共和主義との関わりでなにか新しいこと書けないかなぁと思ってたんですが・・・

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ウェブ関係の論評は、InterCommunicationという雑誌とか、ホットワイアードジャパン(最近ワイアードヴィジョンとして復活)、情報社会論などの文献をちょろちょろって読んではいたけれど、ここ数週間で触れた本たちの実感が、明らかに今までと違う気がする。いくつかの符号があるようなのだけど、いまだにはっきりしていない感じだ。

前提として、今している仕事にウェブが欠かせないことがある。メールとか検索エンジンだけじゃなくて、ウェブサイトの更新も毎週しているし、ポッドキャストの番組も作っている。内部的な情報管理もウェブやサーバがなければ成り立たない。とりたててITに詳しくない自分だって、ここまで使うようになるとは少なくとも大学に入った1990年代の終わりごろには考えてもみなかった。最初に与えられたE-mailの使い方が面倒なので、半年もほったらかしていた口だ。その後、情報化の恩恵をすっかり受けることになるのだが。(大学の寮のインフォメーションルームで友人にグーグルを教えてもらったときの記憶は今でも鮮明だ。)

今の自分はネットどっぷりだけど、いわゆるITの仕事はしていない。近いようで遠い。ウェブ関係の評論にも、熱くなったと思えばすぐに冷めたりと、もやもやした感覚だけが残る。たぶんきっかけは、梅田さんの「ウェブ時代をゆく」だ。彼の前著である「ウェブ進化論」から、でてくる新書は対談本も含め結構読んでいる。だから、ほとんどシリーズものの感覚で読んだのだけれど、ここまで印象に残るとは思っていなかった。この本のなかで一番印象的なのが、「けものみち」のたとえだ。情報化によってネットという「高速道路」を使えば、ある分野のエキスパートになることがこれまでよりずいぶん簡単になってきている。しかし、高速道路の先には渋滞があって、やっぱりそこを通過するのは時間がかかるし難しい。運もいるだろう。でも、ちょっと高速道路を降りてみることもできるかもしれない。高速道路ではない、けものみちを使って、情報だけではなく、コミュニケーション能力やコネクション、ポリシーを持って進んでいくことも可能だし、見方によれば、けものみちのほうが豊かだったりする。そんなことを梅田さんは根気強く訴えている。

自分もどちらかといえばけものみちを歩んでいる気がする(高速道路でもけものみちでもない?)。けれど、梅田さんの言う意味でのけものみちとはまた違う気もする。いわゆるIT系ではない自分には、具体的に梅田さんの言う「けものみち」をイメージできるわけではない。でも、今自分ができることを、発想や目線を少し変えて使ってみればもっとおもしろいことができるのではないかと直感的に感じることはある。たぶん、この本を読んだ誰もが感じる憧憬じゃないだろうか。世間的な言葉でいえばまさに「煽られた」ということになるのだが、例えば「フューチャリスト宣言(梅田望夫・茂木健一郎)」の時とは違って、もっと説得力があって、共感の幅が広い。

「フューチャリスト宣言」のときに合わせて読んだのが「ウェブ社会をどう生きるか(西垣通)」だった。ウェブ社会論というくくりでみれば、梅田さんがアクセルで、西垣さんがブレーキ。その時は西垣さんのほうが説得力があった。現状維持というわけではないのだけど、自分の現状と折り合いがつけられるように思えたのだ。実際に、西垣さんの議論のほうが冷静にみえたし、梅田さんや茂木さんの意見も大事だけれど、もっとじっくり考えていこうという気になった。

しかし、今回の「ウェブ時代をゆく」は、確信犯的革新主義であるとわかっていても引き込まれてしまうところがある。その響きの正体はまだわからない。これだと思ったアイデアを試してみることか?カリフォルニアに行ってみる?フリーランスで働いてみる?(これが一番あり得る未来だ)それとも、いわゆるウェブリテラシーを勉強する?それとも?・・・でも、梅田さんの言う「新しい職業」の誕生をどこかで信じている(信じたい)ところがある。こうなってくると、冷静な分析とは遠くなっていく。なぜなら、自分の生き方の問題と重ね合わせざるをえないから。だから、するべきなのは考察ではなく、判断だ。あるいは、判断しながら考えること。それをやっている梅田さんの魅力がつまっているところが、この本の一番良いところだ。

最近目を通した、ウェブ時代を行くに関連するテクストたち。考察ではなく判断だ、って言い切ったばかりなのですが。

・ウェブ時代をゆく(梅田望夫)
・基礎情報学(西垣通)
・Republic.com 2.0 (Sunstein)
・雑誌「考える人」特集:アメリカの考える人
・Moodle入門(井上博樹、奥村晴彦、中村平)
・Media Education for 21st Century (McArthur Foundation)
・フリーエージェント社会の到来